SWOT分析から学ぶ、ピーチは「低コスト航空会社」
2019年8月7日
大手航空会社に対抗するピーチ。
日本を代表する航空会社と名を挙げるなら、JALやANAと声を上げる方も多いだろう。
だが、時代とともに変わってきた。2012年に格安飛行会社が参入し、日本のLCC3社が就航した「LCC元年」がやってきたのだ。
LCCとは・・・Low Cost Carrierの略で、機内食の削減や手荷物の制限を厳しくすることで、コストを徹底的に抑え、おどろきの安さでチケットを提供する航空会社のことを指す。
代表とするLCCとは
・ピーチ・アビエーション
・エアアジア・ジャパン(現バニラエア)
・ジェットスター・ジャパン
ANAやJALと航空代を比較すると、LCCは3分の1程度という格安運賃が圧倒的な売りになっている!
利用者も毎年増えていき、国内線LCCの利用経験者は25.5%で、2015年の調査時よりも3ポイント増。地域別にみると、2017年は関西エリアの利用率が33.9%となり、関東(21.8%)や中部エリア(20.1%)よりも1割程度多い結果になった。
現在は、日本に路線を持つLCCは、
- ピーチ・アビエーション
- エアアジア・ジャパン(現バニラエア)
- ジェットスター・ジャパン
- 春秋航空日本
と随分増えたのだ。そして、LCC戦争を制したピーチの戦略がはじまった。
低価格競争で打ち勝つピーチの戦略
ご覧の通り、冒頭の格安飛行機会社が参入すれば、当然「低価格競争」に陥るのは目に見えての結果だろう。
そんな中、ピーチは「低価格競争」に打ち勝つために、イノベーションを起こしたのだ。
旅行会社ではないピーチが、個人と個人をつなぐ旅行検索アプリ「旅の予約市場」をリリース
昨年は、Airbnbとピーチによるコラボレーションサイト第1弾企画として2018年、C to C型旅行サイト「COTABI」をリリース。
COTABIでは、『人から検索』する新しい旅のスタイルと題して、ユーザーが体験して共有した移動手段、宿泊、アクティビティなどの旅の内容を追体験(カスタマイズ可能)するパック商品として予約できるという。
そして、今年は第2弾企画が発表される。
旅情報共有プラットフォーム
みんなでつくる旅の小ネタ帳、「tabinoco」を発表!
「tabinoco」は、「旅の小ネタ帳」をコンセプトにした旅に関する情報のプラットフォーム。旅先での意外な発見から、そこでしか味わえない感動の体験まで、個人個人の価値観を通じて見つけたこだわりの情報を写真と共に投稿、共有するそうだ。
ソーシャルメディアを活かした、人と人が繋ぐサービス強化へ。
(出典元:tabinoco タビノコ | みんなの旅にピンときた)
ピーチは、”旅の小ネタ帳”をコンセプトとした旅情報共有プラットフォーム「tabinoco」をオープンした。
個人の価値観を通じて見つけた、こだわりの旅情報を投稿、共有するプラットフォームで、旅先での発見や感動の体験などを写真とともに投稿し、共有できる。ピーチ就航地以外の情報も投稿できる。さらに、寿司、温泉、猫など50種類以上のアイテムの中から、気分にあったものをトランクに入れると、選んだアイテムのイメージに合う旅を探すことができる機能も実装した。対応言語は日本語で、多言語対応も検討する。
TRAICY
ピーチ、旅情報共有プラットフォーム「tabinoco」をオープン ”旅の小ネタ帳”がコンセプト
平成の終わりから令和に入り、もはや企業側が提案する商品が選ばれなくなっている。
マーケティングの鍵を握るのは「共創」だ。
「共創」の先は、コミュケーション、
すなわちソーシャルメディア活用せよ!!
ピーチは、顧客の価値やニーズを顕在化することに重要視していき、お互いの価値観(価値基準)を共感し合い、協働し解決に向けてソーシャルメディアによる、新しい価値基準を共創したのだろう。
ソーシャルメディア戦略は、誰もが参加できる広範的な情報発信技術を用いて、社会的相互性を通じて広がっていくように設計されたメディアである。
双方向のコミュニケーションができることに注目するべきであり、企業だけでなく(個人事業主・中小企業)にとっても導入しやすい施策ではないだろうか。是非ともお勧めしておきたいところである。
「脱エアライン」を目標にしたピーチの世界
ピーチは、その他にもこんな施策を打ち出した。旅慣れたピーチの乗客の声に真摯に耳を傾けた中、「脱エアライン」を目標にしたのである。
遊び心で刺激する!!
なんとピーチの新チェックイン機は段ボール!
(出典元:マイナビニュース LCC・ピーチの新チェックイン機は段ボール!? 遊び心だけじゃない開発の裏側)
従来機では木だった素材を段ボールとスポンジにすることで、素材にかかるコストダウンを図った。「本当はスポンジだけでできた自動チェックイン機を作りたかったんですが、それに足るスポンジとなるとコストが高くなってしまうため、段ボールを併用した現在のスタイルになりました」
マイナビニュース
LCC・ピーチの新チェックイン機は段ボール!? 遊び心だけじゃない開発の裏側
試行錯誤を重ねながら仕組み・やり方を変え、生産性を上げて、低コストで運営することで、結果的に低運賃を実現する。
この背景には「格安航空会社」ではなく、「低コスト航空会社」と謳うピーチにとって、LCCの本質は「安い運賃で運航すること」ではありませんと掲げている。
アイディア満載かつ、遊び心を持つのが令和の時代の象徴になると感じてくる今日この頃。ピーチだけでなく、LCCは薄利多売ではなく、高い利益率と多売を実現した会社であることが感じられる。
「既存のビジネスのやり方を変えたい!」や「何か新しい切り口で現状を打破したい!」と悩んでいる方には、今回の施策は、きっかけをつかめるの機会だと思う。
環境を分析し、チャンスを生かし、ピンチを克服!
ピーチのSWOT分析にはこんなことが考えられた
強み(S)
- 大手航空会社の3分の1程度という格安運賃が売り
- 就航後2年も絶たないうちに累計登場数が300万人を超え、当初の計画よりも2ヶ月も早く目標を達成。
弱み(W)
- 座席数が少なくかつ狭い
- 座席以外は、有料サービス(預かり荷物、機内食、座席指定、その他)
- 払い戻しは基本的に不可!
- 遅延リスクの高い!
- 小さな機体で飛べる短距離を主な守備範囲(太平洋を渡っていくようなロングフライトには利用できません)
機会(O)
- グローバル化の進展により航空機を利用する人が増加
- 2020年東京オリンピック開催で、外国人観光客が増加
脅威(T)
- 中国からの国際線では、東南アジア路線での座席供給が増大
- LCC競合での、格安運賃の争奪戦。
強み×機会→『積極化戦略』
顧客の価値やニーズを顕在化することに重要視し、ソーシャルメディア活かした「tabinoco」をリリース。
強みも機会もあるときは、積極的な攻勢をかけるのに最適。自社・自分の強みを投入する戦略に。
強み×脅威→『差別化戦略』
機械のコスト化=従来機では木だった素材を段ボールとスポンジでアイディア勝負。ユーモアを掛け合わせてコストダウンへ
強みと脅威があるときは、自社・自分の強みを活かして差別化を図り、脅威を切り抜ける戦略に。