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実はギネス世界記録だった!?人類史上最悪の感染症「歯周病」に迫る!!

2020年2月4日

アイルランドのビール会社「GUINNESS」(ギネス)を知っている方は多いと思います。ちょっと高級なイメージのビールですよね。

では、その代表取締役であった、サー・ヒュー・ビーバーが世界記録を集めた雑誌である「ギネス世界記録」を作った方であることはご存知でしょうか?

 

そう!実は同じギネスなんです!

 

そんなギネス世界記録の2001年版には次のような記録が掲載されています。
「全世界で最も蔓延している病気は歯周病である。地球上を見渡してもこの病気に冒されていない人間は数えるほどしかいない。」

これは日本も例外ではありません。
平成26年度の厚生労働省の調査では、30〜50歳代の約8割が歯周病に冒されているという結果が報告されています。

 

そこで、今回のテーマはズバリ「歯周病」
ギネス世界記録にも認定される程多くの方を蝕んでいる「歯周病」が、ここまで蔓延してしまっている理由も含めて解説していきたいと思います。

 

「虫歯」と「歯周病」

敵を倒すためには、まず、敵を知ることが重要ですよね。歯周病を「治療」「予防」するためには、まず、歯周病を知ることから始めましょう!

 

虫歯のメカニズムについては、以前のコラムでも説明させて頂きましたが、ご記憶にありますか?

 

虫歯は歯のエナメル質・象牙質・歯髄を蝕む病気なのですが、歯周病は何を蝕むのでしょうか?その点について歯の構造から復習も兼ねて詳しくご説明していきたいと思います。

 

虫歯のことを復習したい方は以前のコラムを参考にされて下さい。

え!抜けちゃうの?!虫歯で治療した歯の恐怖の末路。歯を守る為にできること。

 

歯の構造

歯の構造イラスト
  • エナメル質(えなめるしつ)体の中で一番硬い組織、歯の一番表面を覆っていて、その内部にある象牙質へのあらゆる刺激を遮断している。
  • 象牙質(ぞうげしつ)…エナメル質の下に存在する骨と同等の硬さの組織、象牙細管と呼ばれる小さな管で歯髄と連絡している。
  • 歯髄(しずい)歯の中にある神経組織。神経を栄養するために動脈・静脈が入りこんでいる。虫歯や知覚過敏で歯がしみたりするのはこの神経組織が傷んでいたりすることが原因です。
  • 歯肉(しにく)…歯を支え骨を覆っている組織。皮膚と同様に骨を外的な刺激から守るバリア機能として働いている。
  • 歯槽骨(しそうこつ)歯を支えている骨。歯が骨に支えられていることで噛むときに力を発揮して、人は食べ物を食べることができる。
  • 歯根膜(しこんまく)歯に加わる力のクッション材。歯に力を加わったときに圧力を感じて、歯に余計な力が加わらないように制御している。
  • セメント質(せめんとしつ)歯と歯根膜をつなぐ組織。歯根(歯の根っこ)の表面を覆っていて、歯にかかるストレスをコントロールするためにその厚みが変化する。

 

今回、新たに説明した歯肉・歯槽骨・歯根膜・セメント質のことを特に歯周組織と言います。

「歯周病」とは文字通り、りの組織の気です。

そう!これら歯周組織を蝕むのが、歯周病なのです!

 

次の段落では、その歯周病に迫ります!

 

「歯周病」とは?

歯周病のイラスト

さて、歯周病はどんな病気なのでしょうか?

虫歯虫歯菌を攻撃する病気でしたが、実は、歯周病歯周病菌歯周組織を攻撃する病気なのです!

 

えっ?また、バイ菌の仕業ですか?

そうなんです!歯周病もバイ菌の仕業なんです!

 

皆さん、歯垢と言う言葉を耳にしたことがあるかと思います。この歯垢はプラークと呼ばれる細菌の集合体で、このプラーク歯周病の原因なのです!

このプラークの中で産生された様々な物質が、歯肉に炎症と呼ばれる腫れを引き起こします。この腫れた歯肉の下で歯槽骨・歯根膜・セメント質が破壊されて、歯の支えが弱くなり歯がグラグラしだし、最終的には抜け落ちてしまう恐ろしい病気なのです。

 

次の段落では、歯周病の進行についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

 

歯周病の進行

歯周病の進行図表

歯周病は先ほどもお伝えした通り、プラークと呼ばれる細菌の塊が歯の周りに付着することで引き起こされます。

このプラークを長い時間放置しておくと、ジワジワと進行していくのですが、ある程度進行しないと症状がほとんどないため、サイレントキラーなんて呼ばれたりもします。

では、歯周病についてその進行に合わせて説明していきたいと思います。

 

歯肉炎

ポケット(歯と歯肉にある溝の深さ)は2、3ミリ

歯肉にプラークによる炎症が起き、歯磨きで出血することがあります。歯肉のみに限定した炎症で歯を支えている歯槽骨は全く影響を受けていません。この段階だと簡単な治療ですぐに治ります。

 

軽度歯周炎

ポケットは3、4ミリ

歯肉の炎症が進み、歯を支えている歯槽骨の吸収が始まっています(吸収量は1/3以下)。

歯磨きの時に出血があるくらいで、症状はほぼありません。この段階でも比較的簡単な治療で治ります。

 

中等度歯周炎

ポケットは4、5ミリ

ここまで来ると、歯を支えている歯槽骨がかなり吸収されています(吸収量は1/3〜1/2まで)。

歯肉が腫れ、自然に出血があり、歯肉の色も赤黒くなっていて、歯が少しグラグラしている状態。このくらいになると少し歯周病も専門的な治療が必要になり、治療の回数・期間も長くなります。

 

重度歯周炎

ポケットは6ミリ以上

歯を支えている歯槽骨がだいぶ吸収されています(吸収量は1/2以上)。

場合によっては、グラグラで指でも抜けるような状態になっていることもあり、ここまで来ると保存することは難しく抜歯に至ることもあります。歯周病の高度な治療が必要になり、歯周病専門医でない先生のクリニックでは治療できないと言われることもあるでしょう。もちろん、治療の回数・期間は長くなり、1年以上かかることも珍しくありません。

 

炎症…損傷あるいは感染に対して体内の組織が起こす免疫反応であり、生体の防御反応。その反応は軽度な方から、発赤・腫脹・熱感・疼痛の順に進行する。

ポケット…歯と歯肉にある溝の深さをポケットという。歯周病による炎症の進行に合わせて、発赤・腫脹が起こりそのポケットが深くなっていく。

 

ちょっと小難しい話になってしまいました。虫歯のメカニズムの解説の時も同じでしたが、どうしても病気の成り立ちを説明すると硬い文章になってしまいます。

ゆっくりと読んで、理解していただければ大丈夫です。

 

歯を失う原因 No. 1

永久歯の抜歯原因円グラフ

歯の生存に関係する原因は主に3つ!

  1. 歯周病
  2. 虫歯
  3. 破折

今回取り上げた歯周病は、歯を失う原因のNo.1です。

これは、歯周病という病気が進行しないと症状が出ないという点が一番大きいと思います。

私も歯周病学会認定の歯周病専門医として日々診療に当たっています。しかし、ご自分の歯周病の状態を把握していない方がまだまだ多いのが現状です。

これからも「守る」メインテナンス型の歯科医院として、 皆さんの”健口”のために伝えていきたいと思います。

次回は、歯周病の治療について解説していきたいと思います。

 

 

アートな歯医者のちょっと真面目な話、ぜひこれも読んで欲しい!!!

https://selfmedia.club/column/tooth/murakami05/

https://selfmedia.club/column/tooth/murakami03/

https://selfmedia.club/column/tooth/murakami04/

 

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