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痛っ!転けたら歯が折れた!?スポーツキッズの事故・怪我から歯を守るには?

2021年1月27日

これまで怪我をしたことがないって方はいらっしゃいますか?
おそらくほとんどの方の答えが「NO」でしょう。
私も小学生の頃、転けて歯をぶつけ歯が欠けてしまった経験があります。その歯は、少し欠けたままですが、今のところ症状なども無く日常生活を送ることができています。みなさんやお近くにもこういったご経験がある方がいらっしゃると思います。
よく考えてみると、身近なお口の周りの「怪我=外傷」は、小さなものから大きなものまで様々です。今回のコラムでは、この「外傷」についてお話したいと思います。
 

外傷って!?

バナナを踏みそうな足
外傷とは、「外力(機械的、物理的、化学的)により生じた組織・臓器の損傷(けが)」と定義されています。※一般社団法人日本形成外科学会より引用)
その種類は多種多様で、出血を伴うような皮膚の切り傷もあれば、命の危険も伴う内臓や脳の損傷まで幅広く分類されます。
 
ここでは日常生活、特にスポーツ・運動時に比較的起こりやすいお口の周りの外傷について触れようと思います。
 

歯の破折・脱臼

冒頭で私の歯が欠けた経験をお話しましたが、それが歯の破折です。また、これは歯の一部が欠けてしまった状態ですが、歯自体がボロッと抜けてしまう歯の脱臼という事も衝撃の大きさやベクトル次第では起こり得る外傷の一つです。
 
統計的には、足下のおぼつかない1歳から2歳くらいの時期と、遊び方・運動の習慣が変わる7から8歳の時期に多いというデータがあります。実際、診療に当たっていてもこのくらいの年代の子が多く受診するように感じますし、私の歯が欠けたのもたぶん7〜8歳の頃だと思います。
 
子供に怪我はつきものです、私たち大人にちょっとした知識があれば、迅速な処置で助けることができる歯もあります。対処法に関してはまたあとでお話しようと思います。
 

頬・舌・口唇からの出血

お口の周りの柔らかい組織の出血を伴う外傷は、みなさんもご経験があるのではないでしょうか?何かの拍子に頬を噛んでキズができたり、熱いコーヒーを飲んで舌をやけどしたことがあると思います、これも小さな外傷ですね。
 
口の中には歯という人体で最も硬く、鋭い組織が存在します。
 
実は、これが口の周りのキズを多くしてしまっている原因なのです。皮膚や頭は、服や髪の毛・帽子などで保護されているのですが、口の中は保護されていない上に、常に歯という刃物と隣り合わせ!とても危ないですよね。
口の中は粘膜で覆われており、皮膚に比べると外力からのバリア機能が弱いので出血も起こりやすいです。しかし、再生能力は皮膚に比べて高いので治りも早いのも特徴で、筋肉の損傷などなければ、数日で元通りになるのでほとんどの場合で心配はありません。
 

顎の骨の骨折

口の周りの起こる外傷として大きなものに、骨折が挙げられると思います。骨折は見た目だけで判断できないのが難しいところですね。
怪我をしたその日に痛みはあるが、腫れがなかったので放置していた。次の日、顔が腫れて病院に行ったら、骨折が判ったなんてことも少なくありません。
 
また、顎の骨は他の部位と少し違い特徴的な形態をしています。それゆえ、右から衝撃を受けたのに左側の骨が折れているということが起こり、骨折があとで見つかることも多々あります。
顎の骨の骨折は、一般の歯科医院のレントゲン写真でも比較的診断がつきやすいので早めに相談することをオススメします。治療が必要な状態が放置されて治癒が始まると、顎の成長や歯並びに影響が出ることがあるので、その点は専門家のアドバイスが必要だと思います。
 

脳震盪

これも目に見えないダメージですね。口の周りに外から大きな衝撃が加わった時、その力は骨を伝わって脳へダメージを与え、脳震盪を引き起こすことがあります。
脳震盪とは一過性の意識障害、記憶障害のことをいい、症状としては頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気、目のかすみなどが見られます。
 
ほとんどの場合数分で回復しますが、5分以上症状の改善が認められない場合は救急搬送を要請する方が安全でしょう。またそのような場合は、頭部と頚部はあまり動かさずにし、吐き気がある場合は嘔吐物で窒息しないように少し横向きにして救急隊員の到着を待ちましょう。
 

もしもの時の対処方法は?

レゴ救急隊
お口の周りに起こる外傷って、意外と身近に潜んでいることはご理解いただけたのではないかと思います。私も二人の男児の子育て中ですが、やはりこういった場面には幾度も遭遇しました。こんな時、対処方法を知っているかいないかは大きな差を生んでしまうかもしれません。
この段落では、その対処方法についてお話しようと思います。
 

止血

出血を伴う場合は、まず止血することが重要です!
口の中の傷であれば、唾液の中に含まれる成分で治癒が促されます、基本的に出血は、10分程でほぼ止まるので安静にしていると問題ありません。しかし、外部の傷はそうはいきません。
そんな時のポイントは2つ!

  • キレイな水で洗い、傷口を確認する!
  • 傷口をキレイなガーゼやティッシュで圧迫する!

 
場合によっては縫わなければならないこともあります。キズを押さえてもドクドク出血が止まらない時や10分以上押さえても出血が落ち着かない時は病院に行って適切な処置を行ってもらう方が良いでしょう。
 

歯の保存

外傷で折れた歯や抜けてしまった歯の保存方法ってご存知ですか?
最近はだいぶ認知されてきましたが、この保存方法を知っているだけで救われる歯がたくさんありますので、ぜひ覚えておいて欲しいです!

  1. 歯の保存液
  2. 牛乳
  3. 口の中

もし、歯が折れたり抜けたりしたら、直ちにこの3つのどれかに入れましょう!
 
学校の保健室なんかには保存に適した専用の歯の保存液があると思います。しかし、学校だけで起こることではありません、そんな時は牛乳か口の中に入れて保存しましょう!
水・消毒液・石鹸と乾燥は絶対NGです!
 
さらに、大事なことがまだ2つ!

  • 絶対に折れた歯・抜けた歯は洗わない!
  • すぐに歯科医院にいく!

 
折れた歯・抜けた歯を水で洗ってしまうと再生に必要な細胞まで死んでしまい、歯を戻した時にうまくいかないことに繋がります。また、処置が早ければ早いほど成功率は上がります、どんなに長くても2時間がリミットです!
 

判断できない時は救急搬送

歯が折れたり、抜けたり、切れて出血が多い時は、その見た目から迅速に対処されることが多いです。しかし、重度の脳震盪骨折は見た目だけでは判断できないことがほとんどで、見逃すと大きな障害を残したり成長を妨げる結果になることもあります。判断ができないときは迷わず救急車を呼んでいいと思います。

予防=マウスガード

マウスガード
全ての怪我を防ぐことは不可能です。特に生活している中で起こるものをコントロールするのは難しいですね。しかし、スポーツ・運動中の口の周りへの外傷は、ある程度防ぐことが可能です。そのために必要なのがマウスガードです!
この段落ではマウスガードについて説明していきたいと思います。
 

その効果は!?

これまで説明した口の周りの外傷のほとんどは歯と歯、もしくは、歯と頬・舌・唇が接することで起こるものです。そこで、人体で最も硬い刃物である歯に鞘をつけることで多くの外傷を防ぐというのがマウスガードの役割です。
 
これにより歯が折れたり、抜けたりする力をマウスガードが吸収し、また、柔らかいマウスガードに覆われた歯は頬・舌・唇を傷つけることはありません。
皆さんのイメージではラグビーやボクシングなどの激しいスポーツだけが付けていればいいとお考えかもしれませんが、もっとたくさんのスポーツで付けて欲しいというのが私たちの想いです。私の印象では、外傷で病院を訪れるのはマウスガードを付けていない野球やサッカーをしている子の方が多いのです。
 

既製品ではなくカスタムメイドを!

通販サイトで既製品のマウスガードを目にすることがあります。確かに手軽で安価なのですが、やはりフィット感・機能を考えると歯科医院での作製をオススメします。
 
確かに歯の生え変わる学童期に比較的高価なマウスガードを何度も作ることは抵抗があるかもしれません。しかし、フィットの悪い既製のマウスガードを使用すると逆に食いしばりを惹起して余計な外傷を生むことになるという報告もあるので、しっかり選択しましょう。
 

私の経験から

サッカーをする子供たち
私も子育てを通してたくさんの外傷を経験してきました。これまで、激しいコンタクトスポーツだけマウスガードをしていればと考えていましたが、実際はそんなことはないようです。
長男が小学生時代にしていたソフトボールの練習・試合の中でもそう感じることが多々ありました。また、私が高校・大学と続けたサッカーでもあの場面で付けていたらこんなことにはならなかっただろうなと思い起こすこともあります。
 
身近に潜む外傷から子供守ることも親の役目だと思います。スポーツキッズをサポートする親御さんは是非かかりつけ歯科医にご相談してください。
 
 
▼▼これまでのコラムはこちら▼▼
https://selfmedia.club/column/tooth/murakami17/
https://selfmedia.club/column/tooth/murakami16/
https://selfmedia.club/column/tooth/murakami15/
 

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