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「NewsPicksパブリッシングはどんな出版社?」メディアオーナーに聞こう!二人目:井上 慎平氏(NewsPicksパブリッシング編集長)

2019年9月20日

ビジネスパーソン必読のソーシャル経済メディアとして、国内でも高い人気と話題性を誇る「NewsPicks」が立ち上げた新規事業。

それが「NewsPicksパブリッシング」

業界でも注目されている出版社の責任者に就任したのが、31歳の若き編集長「井上慎平」さん。業界経験も長い彼が、どのような経緯で編集長に抜擢されたのか?そして、これからの出版業界について伺いました。

業界の方はもちろんですが、出版したい方、出版社を立ち上げたいと考えている方こそ必見の内容になっています。

 

なぜ、井上さんは出版社で働きたかったのか?

出身は大阪で、大学まで大阪にいました。その後、「他人の人生に影響を与えるお手伝いがしたい」思うようになり、出版こそ、この想いを形にできる仕事じゃないか?と、出版社が多く拠点を構える東京に上京、ご縁あってディスカヴァー・トゥエンティワンに7年。ダイヤモンド社に2年在籍。その後、2019年4月からNewsPicksパブリッシングの編集長に就任が今に至る経緯です。

当時、様々な出版社に面接を受けているなか、就職の面接にディスカヴァー・トゥエンティワンへ訪れていた際、休憩所でたまたま社長とお会いし、勇気を出して話しかけさせていただいたことで「君、面白いね」と、気に入っていただき、その後、入社が決まりました。

最初は営業。全国津々浦々営業を経験さえていただき、その後、編集に携わらせていただくことになりました。

ありがたいことに幅広い経験と自由に仕事をさせていただくことができたが、今以上に届けたい人に届く企画の立て方から編集、構成の力をつけたいと、段々考えるように。

違う環境でのチャレンジをしてみたかったこともあり、思い切ってダイヤモンド社へ転職を決意、その後、2年ほどお世話になりました。

 

NewsPicksパブリッシングまでの経歴

newspicks_inoueshinpei_2グングン東洋経済オンラインを引っ張っていた、当時の編集長である佐々木紀彦さん(現NewsPicks取締役 新規事業担当)に興味を持ち、僕が手がけていた書籍を取り上げてもらえないか?と、メールでアポを取り、営業をかけに行ったのが最初の出会いでした。

僕が最初にお手伝いさせていただいた書籍が、佐々木さんの先輩にあたる中室牧子さん著「学力の経済学」だったご縁もあり、覚えてくださっていたのが経緯としてあります。その後、佐々木さんから声をかけていただきました。

その後、NewsPicksでは毛色の違う2つのレーベルを持つ流れになり、現在僕はNewsPicksパブリッシングの編集長を担当させていただくことになりました。

 

井上編集長が大切にしている3つのポイント

newspicks_inoueshinpei_7現在NewsPicksパブリッシングでは、大まかに「文化」関連の書籍は、翻訳のプロで、国内外スケールの大きなビックアイデアを扱う富川副編集長が担当、「経済」関連の書籍は井上が担当と分かれています。

経済はISSUE(イシュー)、VISION(ビジョン)、SOLUTION(ソリューション)の3つが明確である著者を基準に、制作、展開を考えています。
newspicks_inoueshinpei_3pointビジネス書は基本的に「ソリューション」を売るものです。

例えばマーケティングをテーマに扱った書籍の場合、マーケティングを理解するという課題に対して漫画で切り取ったり、1分でわかる説明をしたりといろんなソリューションの角度で攻めるのですが、現在、これらはすでに多く出回っているため、ユニークさを出しづらくなっています。

だから、今は何が課題なのかという認識、つまりイシューがユニークかどうかが重要だと思っているんです。情報爆発により「答え」が溢れた結果、「問い」のほうに価値が出てきているのではないかと。

たとえば、担当させていただいた『転職の思考法』という本は「どうやったらいい会社に転職できるのか?」という問いから、「会社に対しての恩があってやめられないという感情を、どう扱うか?」「転職することは悪だという日本社会の風潮をどうやったら変えられるのか?」という問いを立てたことにこそ価値があったのではと思っています。

イシューを変えないとどうにもならない、というのは出版業界もまさにそうですよね。既存の戦い方の中でソリューションを探っていてもしょうがない

ビジョンは、イシューの裏返しでもあります。「このイシューを解決したらこんな世の中になる」「絶対にそうしたい」というパッションが著者の中にあるか。すべてのビジネス書にそれが必要だとはまったく思いませんが、僕はイシューやビジョンを大切にする正確なので、そういう人とお仕事がしたいですね。

もちろん、イシューとビジョンだけだったらただのポエムになってしまうので、ビジネスの視点から「ソリューション=解決策」を出すことが必要です。この3つがバランスよく必要だと思っています。

 

バランスが取れる役割を担いたい

newspicks_inoueshinpei_6NewsPicksは「経済を、もっとおもしろく。」をミッションに掲げたソーシャル経済メディアです。

これは僕なりの解釈ですが、富川副編集長が得意とする文化的な側面も合わせたり、僕自身の社会的な課題意識をかけあわせて違った角度から経済をとらえることで、経済はよりおもしろくなるのではないでしょうか。

僕自身は、もともと社会側に興味があり、NPOの活動や運営にシンパシーを感じることも多い人間なのですが、いまはそういった社会派の人と経済派の人の間にあまり接点がないように感じています。その橋渡しをする、バランスをとるということが、何かと極端になりやすい世の中における自分の役割なのではないかと。

たとえば、社会派の方が、どれだけ素晴らしい社会を目指していても経済目線がないと持続可能じゃないと思うし、逆に経済派の人が経済のことしか考えず、その先にどんな社会が待っているか?を構想していないと、これはこれで持続可能性がない。だからこそ、そのバランスを取る役割の一旦をNewsPicksパブリッシングが担えたらと思っています。

 

出版業界が活性化するには、読書体験をアップデート?

newspicks_inoueshinpei_4様々なところで耳にされていると思いますが、やはり出版業界全体としては、今後ますます「今までの出版事業の範囲内だけでの事業展開」は厳しいのではないか?と考えています。書籍だけの売上を伸ばしていくのではなく、他の事業に取り組んだ方がいいんじゃないか?とも。

でも、見方を変えると、まだまだ可能性はあると考えます。

「本」は所詮「学びの手段」でしかなく、極論学びはテレビでもラジオでもいいわけじゃないですか?

でも、本があって、著者がいて、その著者とクローズドのコミュニティで交流ができたり、ディスカッションができたり、または一緒に何かを生み出していく。
といった、本前後の読書体験を設計し、アップデートすることで、業界全体が盛り上がっていくのではないでしょうか。

 

小さな出版社の時代

「出版社のカラー」はすごい大事だと思っています。出版の悩みは、書籍ごとにPRが都度都度すべてリセットされてしまうこと。だから、出版社のカラーを認識してもらい、読者と継続的に対話ができる状態をつくっていきたい。そういう意味で、より明確にカラーが出しやすい「小さい出版社の時代」が到来しているのではないでしょうか。

本って、とにかく選びづらいんです。だから、「この出版社が出している本を購入したい、読みたい!」と読者に思ってもらえるような努力をもっと出版社はしていくべきだと思うし、そういう意味で、もっと出版社名を前に押し出すようなところが増えるとおもしろいですよね。

 

出版したい人へのアドバイス、または一言

人の指これは出版社や編集者によってもちろん考え方が違うので、僕の観点になりますが、僕はやはりイシュー、ビジョン、ソリューションがあるかどうかを大事にします。

まず大前提として、ご自身が生業としている仕事や業界、一つの分野について突き詰めておられて、かつソーシャルやメディアで発信されていると、声をかけてもらえる可能性があると思います。

書籍作りは、すっごい大変なんです笑。人の心に残る本を出していくべきなのですが、それがヒットになるかどうかもわからない。しかし、明確なのは、人の心に残らない本はヒットはしません。

だから、著者と編集者とで、ここまでこだわるか!ここまで突き詰めるか!というやりとりが必要になってくる。

その前提で行くと、マーケティングがどうだとか、の前に編集者と著者はビジネスパートナーというタッグを組むので、結局「人として信頼できるかどうか?」が基準になるかと思います。

これは僕が、ですが、その人の人柄やライフスタイルなども発信の中に入っていると、僕自身がこのひとにお会いしたいなぁと最初に感情が生まれます。

顔写真見て「ああ、なんかこの人、感じるものがあるなぁ。なんか違うなぁ、オーラあるなぁ」という、うまく言えないのですが「直感」もすごい大事にしていて。

自分の中で「直感」が働かない人にお声をかけることはまずないですし、おそらくこれは、編集者特有の「直感」というやつでしょうか?おそらく編集者、皆さん持っている気がしますよ。

 

出版社設立を考えている人へ

出版社設立は、登録含めて、実はあまり難しくありません。しかし、大切なのは

  • なぜあなたが出版社を立ち上げたいのか?
  • 出版社を立ち上げて何をしたいのか?

この「why」を突き詰めることが、まず大切ではないかと考えます。

出版業界はやはり全体的に斜陽産業なので、継続し事業として運営していくことは簡単なことではないと思いますので、しっかりマーケットをリサーチし、出版社の価値を高めていくにはどうしたらいいか?を向き合っていくべきかと。

しかし、個人的には出版業界がもっと盛り上がって欲しいと切に願いますし、カラーが出しやすい小さな出版社こそ、今後ニーズがあると思います。

少し余談ですが、岩手県盛岡市にある「さわや書店」という素晴らしい書店があります。もう退社されたのですが、当時僕がお世話になっていた、ビジネスマンとして一番厳しい田口さんという担当の方に、出版業界が抱える改善すべき点を変えていく活動をしていきたい!と伝えたところ、その想いに共感くださり、背中を押してくださった経験があります。

簡単なことじゃないが、100冊販売してくれる書店を50店舗関係を作ったら、とりあえず出版社は食べていける。僕は、君がやるなら100冊販売するよ。
といっていただけて。

マーケットを知る必要はあると思います。でも、とりあえず全力でチャレンジしてうまくいくケースだってあるかもしれない。だから、「出版社を立ち上げたい!」という方がいたら、斜陽産業だから、と諦めるのではなく、熱意があれば周りを変えていくことだってできる可能性があることも、伝えたいです。

 

最後に一言

newspicks_inoueshinpei_5NewsPicksパブリッシングは、「本で、希望を灯す」をビジョンに掲げ、経済メディアらしい、今までと違った書籍を展開していきます。

立ち上がったばかりの小さな出版社だからこそできる、既存の出版マーケティングに囚われない新しい取り組みや活動も考えていますので、応援のほど、よろしくお願いいたします!

 

>> 1988年生まれ。京都大学総合人間学部卒業。2011年、ディスカヴァー・トゥエンティワンに入社。書店営業、広報などを経て編集者に。2017年、ダイヤモンド社に入社。代表的な担当書籍に、中室牧子著『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、北野唯我著『転職の思考法』(ダイヤモンド社)など。<<

>>NewsPicksパブリッシングHP https://publishing.newspicks.com/ <<

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#selfmedia編集部

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2016年10月1日に立ち上がった、「楽しく正しくメディアの作り方がわかる」をコンセプトに掲げたWEBマガジンであり、コミュニティ。 読み名は「はっしゅたぐ せるふめでぃあ」。