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アートな歯医者のちょっと真面目な話 vol.1「定期検診のすすめ」

2019年8月21日

『定期検診のすすめ』

近年の医療の進歩は目を見張るものがあります。

医療支援ロボット da Vinci は時間と空間の物理的な障害を解決して、遠隔医療の技術を飛躍的に向上させました。また、AIの進歩により、これまで蓄積された医療に関するビッグデータを解析して、正確な画像診断や最適な処方薬の選択などに応用されようとしています。

 

医療はより高い水準で維持できるようになり、これらの技術革新により、多くの方の命を救い、Quality of Life(QOL)の向上に寄与してくれることは間違いないと考えられます。

 

しかし、これらはあくまで「治療」を前提とした技術革新です。もちろん、命を守るために必要な技術革新なのですが、医療の本質は生体の恒常性の維持と自然治癒力を高めることにあると私は考えます。

つまり、「予防」こそが最高で最強の医療と考えているわけです。

 

2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞された、京都大学特別教授の本庶佑先生も、21世紀の医療革命として4つのことを提示されていました。その中でも最も切実な問題の一つとして医療費の高騰を挙げられており、その解決策は「治療型」から「予防型」への医療改革であると語っておられました。

 

私の専門とする“”もそうですが、体の中には「再生」「自然治癒」しない組織がいくつかあります。一度失ってしまうと二度と取り戻すことができません。失わないことが一番大事なのです。

 

今回は「治療」から「予防」への意識改革がいかに重要かを「定期検診」というキーワードをテーマにお話ししたいと思います。

 

あなたの未来の歯のために

「皆さん、歯の定期検診に行かれたことはありますか?」

答えがNOである方が大多数だと思います。私も日本にいて歯の定期検診に行くように教育された記憶はありません。

では、海外ではどうなのでしょうか?

他の先進国と比較すると日本の定期検診・メンテナンス受診率は圧倒的に低い水準となっています。以下に示すグラフの通りです。

歯科検診受診率の表

引用元:サンスターHP 一部改変

少し古い資料ですが、歯科先進国のスウェーデンでは90%の方が2、3ヶ月に1度は定期的に歯科を受診してクリーニングとチェックを受けています。

それと比較して日本は5%…。いかに日本人の歯に対する意識が低いかがわかります。

 

「守る」と「削る」

ここには欧米と日本の歯科医院の在り方の違いがハッキリと表れています。簡単にまとめると以下のようなイメージだと思います。

予防治療のススメ

私のオーストラリア人の友人は、こんな歯科に対する習慣を持つ私たちにこう言っていました。

「日本人はウォシュレットでお尻は綺麗にするくせに、歯医者に行って口は綺麗にしない人種だよな〜」

 

この習慣の違いによる影響は年齢を重ねてくると顕著に表れてきます。欧米人の歯の状態と日本人の歯の状態にどのような差が生まれてくるのでしょうか?その答えは以下に示す通りです。

80歳残存歯、グラフ

引用元:サンスターHP 一部改変

定期検診受診率90%のスウェーデンでは、80歳で歯が20本残っているのが平均です。これに対して、日本は80歳で歯が8本残っているのが平均なのです。

つまり、定期検診の受診率は歯の喪失に直結しているのです!このことは我々の先人達も多くの方が後悔の念を抱いているのが現実。

 

『プレジデント』2012年11.12号でこんな記事がありました。

シニア1,000人調査で判明した「リタイア前にやるべきだった……」後悔トップ20という記事の中で、

  • 「健康」
  • 「仕事と人間関係」
  • 「お金と暮らし」

の3つの分野で調査結果が紹介されていました。

 

「健康」
  •  第1位:歯の定期検診を受けていればよかった。
  •  第2位:スポーツなどで体を鍛えればよかった。
  •  第3位:日頃からよく歩けばよかった。

 

なんと、健康分野では「歯の定期検診を受けていればよかった」が1位でした。記事によると、みなさん口を揃えて『歯を大切にすればよかった』という後悔の念が強いことです。

  • 「歯を欠損すると食事の楽しみが半減する」
  • 「歯の治療には時間とお金が掛かる」
  • 「入れ歯は元通りの歯と同じように噛めるものではない」

というのが経験者の実感なのでしょう。

 

予防来院という選択

では、具体的に定期検診を受けている人と、痛い時にしか歯科医院に行かない人の口の中は年齢と共にどう変化していくのでしょうか?
定期検診と残存歯のグラフ

引用元:長崎大学 新庄教授の研究より 一部改変

上に示すように、二極化していきます。治療型の受診であればほとんどの歯を失ってしまいますが、歯科医院に定期的に通い、適切なメインテナンスを行うことで多くの歯が助けることが出来るのも事実です。

 

『磨き方改革のすすめ』

『プレジデント』2019年8.2号の中で、ソフトバンクグループの会長兼社長の孫正義さんも「3ヶ月に1度の定期検診を長年継続している」と語っています。

おそらく、世界中を飛び回って分刻みのスケジュールをこなしつつ、メインテナンスに行かれている事でしょう。

 

「子育てが忙しい」「仕事が忙しい」を理由に定期検診に行っていないという方がたくさんいらっしゃると思います。お気づきだと思いますが、実はそれは言い訳なのです。

「働き方改革」の次は「磨き方改革」
20年後、30年後、40年後の自分のために、まずは歯のクリーニングから始めましょう!!

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